大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和27(あ)6836 判決

主 文

原判決及び第一審判決を破棄する。

本件を福岡地方裁判所に差戻す。

理 由

弁護人秋根久太の上告趣意第一点について、

第一審判決の確定した事実は、「被告人は、昭和二四年五月九日D、Cの両名連

帯保証の下にBに対し、金六五〇〇〇円を利息年一割、弁済期同月二五日の約定に

て貸付け更に右債権を担保する為B所有の土地二筆、住家一棟工場二棟の所有権の

譲渡を受け、福岡市a町b番地E公証人役場に於て第五六一九一号(第五六一九四

号とあるは誤記と認める)金銭消費貸借及譲渡使用貸借公正証書を作成していたが、

同年九月二五日連帯保証人Dから元利金全部の弁済を受けたので、右債権は消滅し、

従つて担保物件たる土地家屋に対する被告人の権利も又消滅に帰していたのである。

ところが一方Aは当時Bの被告人に対する別口三五〇〇〇円と二〇〇〇〇円の債務

につき連帯保証人となり、同人がその支払を為さなかつた為被告人から之が支払の

催告を受け焦慮していた際、被告人より前記公正証書作成の六五〇〇〇円の債権が

未だ弁済なく担保物件も被告人の所有に帰したことを聞知したので、自己の保証債

務の追求を免れるため、土地家屋を譲受け且つ被告人のBに対する一切の債権即前

示六五〇〇〇円、三五〇〇〇円(但し内金一〇〇〇〇円は当時弁済済)二〇〇〇〇

円と別に被告人のBに対する二〇〇〇〇円(但し内金一〇〇〇〇円は当時弁済済)

の各債権を一二万一〇〇〇円で譲受けることの承諾を得たのである。かくて被告人

は昭和二五年四月三日Aと共に前記E公証人役場に赴き同公証人に対し既に消滅せ

る前記六五〇〇〇円の債権が尚存在するものの如く装い、これをAに六五〇〇〇円

で譲渡する旨虚偽の申立をし、同公証人をして債権譲渡契約公正証書の原本に被告

人が右債権を対価金六五〇〇〇円で右Aに譲渡した旨不実の記載を為さしめ、即時

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これを同役場に備付けさして行使し、よつてAをして、同人が被告人から譲受けた

右債権が尚有効に存在するものの如く誤信させ、債権譲渡名義下に額面八一〇〇〇

円の約束手形一通(但し騙取額は六五〇〇〇円の範囲内)の交付を受けてこれを騙

取したものである。」というのである。

しかし、本件記録に徴すれば、Aが、被告人のBに対する前記第五六一九一号公

正証書による貸金債権六五〇〇〇円の譲渡契約を被告人との間に締結したのは、A

において、右貸金債権が未だ消滅せず尚存在するものと信じたが故か、或は被告人

において右公正証書の執行正本を入手し得る状態にあつたので、形式上は右貸金債

権の担保物となつていた前記土地建物を連帯債務者Cの承諾の下に、AのBに対し

て有する求償債権及びAが被告人から譲受けた別口二〇〇〇〇円の債権(手形によ

る)の確保のため振り向けて利用するためになされたものかは、疑問の存するとこ

ろであつて、第一審判決が、被告人は前記公正証書による貸金債権は既に消滅して

いるのにも拘らず、尚存在するものの如く装い、Aをしてその旨誤信せしめて判示

約束手形(騙取額は六五〇〇〇円の範囲内)を騙取したものと認定したことは、重

大な事実の誤認を疑うに足る顕著な事由が存するものと認めるので、右第一審判決

並びにこれを是認した原判決を確定させることは著しく正義に反するものと認める。

よつてその余の論旨に対する判断を省略し刑訴四一一条三号、四一三条に則り原

判決及び第一審判決を破棄し、本件を第一審裁判所に差戻すべきものである。

この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官 川井寛次郎公判出席

昭和三一年三月九日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

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裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

裁判官 池 田 克

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